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一般講演 G1-04

釧路湿原におけるハンノキ林の空間分布とその成因に関する研究

*中谷曜子(北大・院・農),冨士田裕子(北大植物園),金子正美(酪農学園大)

北海道東部の釧路湿原では、農地開発やそれに伴う河川改修による湿原域の減少や、ハンノキ林の加速度的な拡大といった、湿原環境の急激な変化が問題視されている。中でも、ハンノキ林の分布域の拡大あるいは縮小の詳細は、明らかにされてこなかった。そこで本研究では、河川改修によって直線化された久著呂川と直線化されていないツルワシナイ川の流路を含む湿原域(約11km2)において、ハンノキ林の分布を1977年及び2000-2004年の2時期で、空間的に捉え(被度と樹高)、どこでどのような事象が起こっているか、時系列の分布の変化を明らかにすることを第1の目的とした。第2に、近年のハンノキ林の急激な拡大に大きく関与しているとされる土砂や栄養塩などの供給源である河川に注目し、対象地内の河川の流路の変化とハンノキ林の分布の変化を比較検討した。

ハンノキ林の被度及び樹高の大幅な拡大や縮小が顕著なのは久著呂川の流域であった。また、対象地内では、被度と樹高の変化は連動していなかった。被度に関しては、広域で増加傾向にあったが、久著呂川と丘陵地の間で急増していた。この場所では、地形が谷状になっていることから、丘陵地や河川上流からの水や栄養塩などが停滞しやすいと考えられる。樹高に関しては、河川跡地近傍や丘陵地際での増加が顕著であった。また、久著呂川の直線化部分末端から下流約1〜2.5km付近では、樹高の減少が見られた。この場所は、1977年の時点では、比較的樹高が高く、その後の倒木や主幹の枯死が樹高の減少の原因と推定された。以上より、被度は、上流域からの水及び栄養塩の集中する場所で増加し、樹高は河川跡や丘陵地際の土砂が堆積した場所で増加すると考えられた。

日本生態学会