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一般講演 H1-05

炭素・窒素安定同位体比からみたトビムシの食性解析

*菱拓雄(京大院・農),兵藤不二夫(総合地球環境学研究所),斎藤星耕,武田博清(京大院・農)

トビムシは土壌生態系において、面積あたりの個体数、種数共に非常に高い。これまで一般的に、腐植食性のトビムシは明確な食物資源分割なしに多種共存を実現していると考えられてきたが、近年の窒素安定同位体を用いた研究からトビムシの窒素安定同位体比が種間で大きく異なることが示され、種ごとに異なる食性をもつことが示唆された。しかしその窒素同位体比が変動する理由は明らかとなっていない。我々は、トビムシの窒素同位体比の大きな変動は、ミミズやシロアリなど他の土壌動物でも見られるように、食物源の分解段階に伴ってトビムシが資源分割しているのではないかと考えた。

この仮説を検証するために、我々は京都大学上賀茂里域ステーションの暖温帯性ヒノキ林において、トビムシ(腐植食性フシトビムシ)11種とそれらの食物源としての土壌有機物の炭素・窒素安定同位体比を測定した。本調査地におけるトビムシ群集の長期個体群動態情報およびリター分解に沿った遷移パターンにより、トビムシを初期定着種、後期定着種、全期優占種の3つのクラスに類別し、その窒素炭素安定同位体比を比較した。その結果、土壌基質の炭素・窒素安定同位体比は、リター層から腐植層に移行するに従って増加した。トビムシでは、初期定着種で後期定着種よりも低く、全期優占種はその間の値をとった。このパターンは過去のシロアリやミミズにおける研究と一致しており、トビムシ群集は、食物源の有機物分解系列に沿って資源分割し、多種共存を実現していると考えられた。

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