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一般講演 H3-10

マイマイガ性比異常雌の10年間の頻度変化

*東浦康友,山口博史,五十嵐章裕,小野菜々子,塚越英晴,時下進一,山形秀夫(東薬大・生命),石原通雄(兵庫医大・生物)

北海道美唄市のマイマイガ個体群で、male-killingの性比異常雌を発見したのは1995年産の個体からであった (Higashiura et al. 1999)。ここでは、子が雌の子ばかりとなる個体を「単性雌」と呼ぶ。マイマイガの単性雌からはWolbachia属などの細菌は見つかっていない。北海道亜種のミトコンドリアDNA (mtDNA)ハプロタイプは本州亜種とは約2%も塩基配列が異なり、約100万年前に分岐した (Bogdanowicz et al 2000)。ところが、北海道でハプロタイプを解析したYamaguchi et al. (2007) によると、石狩低地帯を境として、東には北海道亜種のハプロタイプが分布し、西には本州亜種のハプロタイプとされたものが分布していた。また、石狩低地帯では両ハプロタイプが混生していた。単性雌のハプロタイプは北海道型ではなく、いわゆる本州型であった。また、北海道の雌に本州の雄を交配すれば子はすべて雄になり、本州の雌に北海道の雄を交配して得たF1の雌に北海道の雄をもどし交配すれば、すべて雌になる (Higashiura et al. 2007)。すなわち、ハプロタイプの分布から考えて、美唄市で見つかった単性雌は、石狩低地帯以西の雌が、東に侵入し、北海道型のハプロタイプを持つ雄と交配し続けている結果であると考えられた。石狩低地帯を境とするmtDNAハプロタイプの相互侵入を考えると、この侵入は非対称である。今回は、北海道美唄市の2つのシラカンバ林で単性雌の頻度変化を10年間調べた結果を報告する。ほぼすべての個体の子の性比と同時に、ハプロタイプも解析した。また、個体当たり卵数も推定し繁殖成功度をハプロタイプ別に比較した。

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