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一般講演 P1-028

ウスキシロチョウにおける幼虫表現多型に及ぼす密度効果

*儀間朝宜,辻和希(琉大・農)

ウスキシロチョウは南西諸島を北限とするシロチョウ科の蝶で、大群での移動や成虫の2型(銀紋型/無紋型)、高密度の環境における幼虫の黒化が知られている。銀紋型の発現は季節的な説明がなされてきが、銀紋型は高密度移動型とする密度効果による説明も提示されている。しかし、幼虫黒化と成虫の表現多型との関連性についての報告はなく、密度が与える幼虫黒化以外の緒形質への影響についての報告もない。そこで、本研究では、ウスキシロチョウにおける密度効果を更に詳しく調べるため、野外で採集した雌から得られた卵を、1頭区と4頭区、8頭区に分け飼育し、幼虫期間・体長・体色・体重・蛹期間・翅型を記録した。

その結果は、高密度下において、幼虫期間と蛹期間の短縮、幼虫の体長と体重の低下、黒化度の促進がみられた。しかし、成虫の銀紋型は中間的な高密度である4頭区で多く発生し、幼虫の黒化と成虫の銀紋型との関係性は弱いと考えられた。蛹期間は中間型、無紋型、銀紋型の順に短い傾向があった。高密度下での幼虫期間・蛹期間の短縮化は、種内競争により生存率が低下する高密度の環境から、早く脱出するための適応的な形質である可能性が考えられる。また、そのトレードオフによりサイズの矮小化が生じたのかもしれない。

日本生態学会