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一般講演 P1-033

房総半島におけるシカ個体群の空間動態と駆除戦略

*藤田 剛(東大・農・生物多様性), 鈴木 牧(東大・演習林), 山道真人(東大・農・生物多様性), 落合啓二, 浅田正彦(千葉県博), 宮下 直(東大・農・生物多様性)

大型草食獣の高密度化にともなう生態系インパクトや農業被害の増加は、世界的に重要な課題となっている。その対策として対象動物の密度管理をはかる際、個体群動態を記述するモデルが大きな役割を果たす。中でも、分布が拡大途中であったり生息地がモザイク状であったりする場合には、出生や死亡、移動分散に空間構造が生じている可能性が高いため、空間明示モデルが有効だと考えられる。

演者らは、房総半島のシカによる生態系インパクトと農業被害の予測と防除を目的に、シカ個体群の空間動態を記述する空間明示個体群モデルを構築した。房総では1970年以降、著しい個体数増加と分布拡大が認められ、森林生態系にさまざまなインパクトを与えている。本モデルは、1x1kmサイズのセルを単位に、出生、死亡、移出入を計することで房総半島全域での分布変化を求める (モデルの詳細は 藤田らの昨年自由集会の発表、房総全域の餌量推定は鈴木らの発表、出生率パラメータは安藤ら、分散パラメータは山道らの発表を参照)。

本発表では、このモデルの計算結果を用い、シカ密度、出生率、死亡率、移出入率の空間動態が、シカの密度履歴や分布域内の位置、景観構造などとどう関係しているのかを明らかにする。そして、どこでいつどれくらいの駆除を行うべきか、これらの空間動態を考慮した上で最適駆除努力配分を求め、現行の駆除デザインの効果と比較する。現在、房総半島ではシカ分布の中心部を高密度に維持することが提言されている。また、最適配分にもとづいた駆除計画が実施された場合でも、市町など行政単位によって駆除達成度にばらつきが生じる可能性があるため、このばらつきが駆除効果におよぼす影響も推定する。

日本生態学会