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一般講演 P1-034

真社会性アブラムシの個体群動態と兵隊率決定要因〜ササコナフキツノアブラムシの兵隊率は捕食者密度で決まっている!?〜

*服部充(信大・理・生物),市野隆雄(信大・理・生物,信大・山岳研)

ササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonicaは、不妊の兵隊カストを産出する真社会性アブラムシである。1年を通してササの葉裏にコロニーを形成し生活する。本種を捕食するスペシャリスト天敵としてゴイシシジミ Taraka hamadaとセグロベニトゲアシガ Atokinsonia ignipictaの2種が知られており、ゴイシシジミは一年中、セグロベニトゲアシガは夏に捕食することがわかっている。さらに、予備的な調査によりこれら捕食者に、兵隊カストは捕食者に対して一定の防衛効果を持つことが示唆されている。

本研究では、兵隊カスト率が捕食者密度によって決まっているという仮説を検証した。ササコナフキツノアブラムシの3つの野外個体群について兵隊カスト率の時空的変動を調べ、それと様々な生態学的要因との相関を調べたところ以下のことが明らかになった。

1)コロニーあたりの天敵数が多いほど兵隊カスト率は高かった。

2)成虫率が高いほど兵隊カスト率は高かった(捕食者はアブラムシ幼虫を好食するので、捕食者がいるほど成虫率は高くなる)。

3)アブラムシにアリが随伴している個体群は捕食者数が少なく、兵隊カスト率は低かった。

本研究は、スペシャリスト天敵の捕食圧がアブラムシにおける兵隊カスト産出の主要因であることを示す初めての例である。

日本生態学会