| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P1-057

干潟底質の有機物分解機能に影響を及ぼす要因

*広木幹也(国立環境研), 千賀有希子(立正大・地球環境), 野原精一(国立環境研)

底質中で微生物分解に伴い酸素が消費されることから、一般に、有機物含量の高い底質ほど、より嫌気的な環境になりやすいと考えられる。しかし、小櫃川河口干潟(千葉県木更津市)におけるこれまでの調査の結果、有機物含量の増加に対して還元の進まない場合が認められた。また、これらの地点の理化学性を比較した結果、塩分濃度が有機物分解活性を通じて酸化/還元環境に影響していることが考えられたので、野外実験および室内実験により、塩分条件と干潟底質の有機物分解活性の関係について検討した。

野外実験では、小櫃川河口域で似たような景観を持ちながら塩分濃度の異なる泥質の干潟2地点(A、塩分濃度1%;B、同2%)において、セルロースろ紙および木綿布を30日間埋め込み、重量の減少量を測定し、セルロース分解速度を求めた。その結果、A地点ではB地点よりもセルロース分解速度は速く、また、底質の還元も進んでいた。

室内実験では、地点Bより採取した底質を、異なった濃度(0、1および2%)の食塩水中で5週間培養し、添加したろ紙の分解速度、ORP、CO2発生量、CH4発生量、グルコシダーゼ活性、および細菌相の多様性の変化を系時的に調べた。その結果、ろ紙分解速度は塩分濃度1%で最も速く、0%がこれに次ぎ、2%が最も遅かった。この結果は、野外実験において塩分濃度の高いB地点においてセルロースの分解が遅かったことと一致する。しかし、グルコシダーゼ活性は塩分濃度2%の条件下で培養した底質のほうが1%の条件で培養した底質よりも高く、ろ紙分解速度の結果と一致せず、底質中での酵素の存在状態、活性に塩分濃度がさらに影響している可能性が考えられた。また、底質中の細菌群集が利用できる炭素源の解析結果から、塩分濃度によって底質の細菌相が異なることが示唆された。

日本生態学会