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一般講演 P1-060

化学物質の生態影響 ー亜鉛のリスクを評価するー

加茂将史,対馬孝治,内藤航

化学物質のリスク評価では、生態リスクとヒト健康リスクでは異なるレベルのリスクが想定される。ヒト健康リスク評価では、何個体に有害影響が現れるかということを調べ、単位は個体である。それに対し、一般的に想定される生態リスクは、集団の絶滅確率や地域集団の持続可能性など、単位は集団であることが多い。しかしながら、リスク評価においてなされる毒性試験は個体レベルでの影響の評価を念頭において発展してきたため、集団レベルでの影響を評価するには不十分である。これらのギャップを埋めるための評価手法を開発し、集団レベルでのリスク評価から得られる、化学物質の新たな管理・対策のあり方についての考察を行う。本研究では、亜鉛の生態リスクの評価を行った。亜鉛は必須元素であるが、高濃度では有害な影響が生じる。亜鉛等の重金属は非常に多くの毒性試験がなされており、それら文献の調査を行い評価を進めた。まず、従来の評価手法である個体レベルでの評価を行うことで、水生生物の保護にふさわしいと考えられる亜鉛の濃度の推定を行った。さらに、繁殖や生存における濃度反応関係を考慮した数理モデルを構築し、幾つかの種において集団の維持が困難になると予測される亜鉛濃度の推定を行い、集団レベルの観点からふさわしいと考えられる濃度の推定を行った。従来では個体レベルでの影響のみを評価し、その評価から得られる影響濃度を超えればリスク有り、超えなければリスク無し、と考えることが多かった。二つのレベルでのリスクを評価することにより、より柔軟なリスク判定を行うことが可能になると考えられる。

日本生態学会