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一般講演 P1-087

植生図からみた北海道の鳥獣保護区

玉田克巳(北海道環境科学研究センター)

北海道の鳥獣保護区(以下保護区と略す)は、国指定が13ヵ所、道指定が334ヵ所あり、その総面積はあわせて6,929km2であるが(2003年度現在)、保護区の自然環境に関する情報は十分とは言えない。そこで植生図や標高情報などのGISを用い、保護区の植生等の現況について調べたので報告する。低標高地域(標高0〜100m)における保護区の総面積は2,028km2で、これは北海道全体の保護区の29%に相当するが、この標高区分において、北海道面積全体に対する保護区の占める割合は9%にすぎない。低標高地域では、湿原植生の46%、開放水域の38%が保護区に指定されており、森林植生では、針葉樹林、広葉樹林、針広混交林、低木林のそれぞれ10〜20%が指定されている。一方、高標高地域(標高1,301〜2,200m)における保護区の総面積は、わずかに377km2であるが、この標高区分の48%が保護区に指定されている。中標高地域(標高101〜1,300m)では、保護区の総面積は4,524km2で、北海道面積全体に占める割合は8%である。この標高区分では森林植生の占める面積が多いが(42,821km2、77%)、森林植生のうち保護区に指定されている割合も8%である。これらのことから、北海道では、高標高地域はほとんどが保護区に指定されており、低標高地域も湿原、湖沼、森林を中心に多くの地域が保護区に指定されている。これは、高標高地域の多くが自然公園に、低標高地域の大規模な湿原や湖沼がラムサール条約登録湿地に指定されて、保護区にも重複指定されているからであると考えられる。一方で、中標高地域では、森林が多く存在するが、保護区に指定されているのは、わずか8%であり、今後は、中標高地域における保護区指定のあり方を考えていくことが重要な課題である。

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