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一般講演 P1-097

ため池におけるトンボの種構成と環境要因との関係:NMDSおよびクラスター分析を用いた解析

*浜崎健児,山中武彦,田中幸一,中谷至伸,岩崎亘典,David S. Sprague(農環研)

ため池がもつ生物保全機能は,農業形態の変化や都市化の進行により失われる傾向にある。この機能を維持・回復するためには,池環境と生物群集との関係を解明することが重要である。そこで,水域と陸域に依存するトンボを材料として,池環境および周辺土地利用がトンボの種構成に及ぼす影響を解析した。

茨城県南部に設定した調査地域内(10km×8km)の74カ所の池で,トンボ成虫を調査した。調査は2005年5,6,7月に一回ずつ行い,種類および個体数(4段階のランクデータ)を記録した。また,環境要因として,水質,堆積物の厚さ,水生植物の被覆面積,餌生物の密度,魚類の有無を調べた。さらに,GISを活用して池周囲10-300m以内の土地利用面積割合を1/2,500都市計画図から抽出した。

本調査により9科41種のトンボを確認した。このうち27種のデータを用いてクラスター分析およびINSPANを行った結果,池は6つのグループに分類され,うち4つで指標種が選出された。また,NMDS(nonmetric multidimensional scaling)第1軸と環境要因との相関から,指標種は(1)周囲10-50mの樹林割合が高く落葉等が堆積した池に生息する種,(2)周囲10-50mの開放地割合が高い池に生息する種,(3)池環境にかかわらず広域に生息する種の3タイプに分かれた。これらの結果は,それぞれの種の生態的特性とよく対応した。また,NMDS第2軸と環境要因との相関から,種数は,樹林に囲まれ水生植物が繁茂する池で多く,護岸率が高く開放地に囲まれた池で少ないことが示された。池環境は,水生植物・周辺樹林の減少や岸辺の護岸化が進む傾向にあり,このような変化は,多くのトンボ種,特に,樹林依存種に対して悪影響を及ぼすことが示唆された。

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