| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P1-105

ヤクシカの餌場としての林道:食物現存量からの評価

*寺田千里(筑波大・生物資源学類),立澤史郎(北大・文・地域),川村貴志(屋久島まるごと保全協会),藤岡正博〈筑波大・農技センター)

近年、全国各地でニホンジカ(〈i〉Curvus nippon〈/i〉)の個体数増加が報告されており、屋久島でも亜種ヤクシカ(〈i〉C. n. yakushimae〈/i〉)が増加している。シカの個体数増加や分布拡大の要因として、人為的な自然の改変、特に自然林の人工林化や林道の敷設による餌資源の増加の可能性が指摘されているが、それを実証的に調べた研究はまだない。そこで、屋久島の人工林と自然林の林道脇と林内において食物現存量と食痕を調べ、林道がヤクシカの食物条件に与える影響を検討した。調査地は鹿児島県屋久島北東部の小瀬田林道周辺(標高150〜180m)のスギ人工林と広葉樹二次林各2箇所に設けた。調査は刈り取り法により行い、2006年7・9月に各調査地の林道脇と林内各2箇所(計16箇所)に設けた1m四方の方形区内を刈り取り、乾燥重量(80℃×72h)を測った。また、方形区周辺に固定トランセクト(0.5m×30m)を設定し、その中の食痕数を数えた。どの方形区においても食物現存量(地際から刈り取った幹・茎が直径5mm以下の植物現存量)の大部分はシダ植物が占めていた。食物現存量と食痕数については、林内よりも林道脇で有意に多く、二次林よりも人工林で有意に多かった。また、全天写真で求めた空隙率と食物現存量には有意な正の相関が見られた。これらの結果より、空隙率が増す林道では食物現存量が増加し、実際にヤクシカは林内より林道脇をよく利用していることがわかった。

日本生態学会