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一般講演 P1-106

針広混交林開拓跡地における植生の変遷

庄山紀久子(北大・環境科学)

北海道知床半島岩尾別・幌別台地(1,270ha)は開拓以前には針広混交林が分布していたが、1910年代以降開拓という人為的影響により本来分布していた原生的な森林植生は減少した。その後離農により放棄され牧草地やササ地などの植生に変化し、1978年以降は森林植生の復元を目標に植林運動が行われている。本研究では開拓跡地の植生履歴を把握するため入植以降の空中写真から植生変遷図を作成し、GISによる植生変化の定量的評価を行った。推移行列モデルを用いた解析を行うことにより、1)開拓期、2)放棄期、3)植林期における植生タイプの時間変化をモデル化した。戦後開拓期に著しく減少した森林植生の回復について、放棄期と植林期では大きな違いはみられないが、植林はササ地の減少に寄与していた。

また開拓跡地の復元状況を明らかにし、復元を目標とする植林の効果を検証することを目的に現地での群落調査および解析を行った。1987-1988年に行われた群落調査の結果から開拓跡地の植生は7群落に分類され、その追跡調査を2005-2006年に行った。また開拓跡地に隣接する自然植生である針広混交林を対照区として設定した。針広混交林と比較すると、開拓跡地の各群落の出現種数・多様度指数はいずれも低い値を示しており、18年間の比較でも大きな変化はみられなかった。しかし類似度、序列化スコアでは植栽後およそ40年経過したカラマツ植林地は針広混交林の種組成に近づいていることが示された。また各群落の非在来種の出現種数は0〜5種であり両年では大きな違いはみられなかった。

以上から植林による自然植生への復元可能性は認められるが、現在植林地の下層に生育する侵入稚樹が今後順調に生長し森林群集が再生するために有効な管理手法の検討が必要である。

日本生態学会