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一般講演 P1-127

渡良瀬遊水地におけるハイパースペクトルリモートセンシングを用いた絶滅危惧植物の潜在的生育適地の推定

*石井潤,盧珊,船越翔,清水庸,戸並知大,安島美穂,大政謙次,鷲谷いづみ(東京大院・農)

関東平野の北部に位置する渡良瀬遊水地は、本州以南で最大の面積(約3,300ha)を持つ湿地帯であり、ヨシとオギの高茎草本群落が発達する湿地の中に全国的に絶滅が危惧される植物が49種生育する生物多様性保全上重要なウェットランドの1つである。本研究では、航空機搭載型ハイパースペクトルリモートセンシングを用いて、絶滅危惧植物の潜在的生育適地を地図化する手法を開発した。絶滅危惧植物の潜在的生育適地は、以下の手順で推定した。

1)ヨシとオギのシュート密度と下層植生タイプとの関係の把握。

現地に設置した613方形区(1×1m)の植生調査によって取得したデータ解析によって、TWINSPANによって分類された4つの下層植生タイプが、ヨシとオギのシュート密度の比から推定可能となった(Kappa係数=0.71)。

2)ハイパースペクトルリモートセンシングによるヨシとオギのシュート密度の推定および下層植生タイプの地図化。

ハイパースペクトルデータとヨシとオギのシュート密度との関係を23方形区(5×5m)で取得したデータに基づいて解析した結果、ハイパースペクトルデータからヨシとオギのシュート密度をそれぞれ決定係数0.71および0.73の精度で推定できる重回帰式が得られた。それに基づき、1)で明らかにした関係を用いて、調査地全域における4つの下層植生タイプの分布地図を作成した。

3)絶滅危惧植物の潜在的生育適地の推定。

この地図を用いて、184ポイントで取得した絶滅危惧植物8種と下層植生タイプとの関係を解析し、種ごとに特徴的な下層植生タイプとの結びつきを明らかにした。このような地図化手法により、ハイパースペクトルリモートセンシングを用いた絶滅危惧植物の潜在的生育適地の広域モニタリングが可能となった。

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