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一般講演 P1-133

創出したヨシ群落における絶滅危惧種ヒヌマイトトンボの個体群動態

*東 敬義(三重県埋蔵文化財センター), 渡辺 守(筑波大学・生物科学系)

1998年、三重県伊勢市の下水道浄化センター建設予定地に隣接するヨシ群落(既存生息地,約500m2)でヒヌマイトトンボが発見された。浄化センター完成後は、生活排水が流入しなくなり、乾燥化や塩分上昇など生息環境の悪化が予測されたので、この個体群を保全するため、2003年1月、隣接した休耕田にヨシを密植して、新たに生息地を創出した(創出地,2,110m2)。毎年5月上旬に、一辺が25cmのコドラートを既存生息地に5カ所、創出地に30カ所設置して、幼虫数を推定したところ、既存生息地では、60,000頭(2004年)、11,000頭(2005年)、41,000頭(2006年)と推定された。一方、創出地では、創出2年目に54,000頭(2004年)であったが、125,000頭(2005年)、204,000頭(2006年)と増加した。成虫の個体数を推定するため、飛翔期間である5月下旬から8月上旬まで、ラインセンサス法を用いて調査を行なった。ライン10m当たりの発見個体数から、1m2当たりの日当たり個体数を計算し、羽化した成虫の総個体数を推定した。その結果、既存生息地では、この4年間、毎年15,000〜18,000頭であり、単位面積当たりの総個体数は、約20頭/m2と安定していた。創出地の総個体数は、2004年に11,000頭であったが、年々増加して、2006年には46,000頭となり、単位面積当たりの総個体数は22頭/m2と計算され、既存生息地とほぼ同程度となった。羽化直前となる5月の幼虫の推定個体数と成虫の推定総個体数から羽化率を計算すると、2006年では、既存生息地が30%、創出地が23%と、両者の差は小さい。これらの結果から、創出4年目でミチゲーションは成功したと評価している。

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