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一般講演 P1-154

林床性多年生草本植物オオバナノエンレイソウにおける実生定着と菌根菌の関係

*山岸洋貴,大原雅(北大・院・環境科学), 富松裕(首都大・理工), 橋本靖(帯畜大・環境)

温帯の林床植物の中には、二重休眠と呼ばれる特殊な発芽形態を持つものがある。二重休眠とは、散布された種子が一度目の休眠後に幼根のみを伸長させ再び休眠し、二度目の休眠以降にはじめて地上部を展開させる発芽特性をいう。例えば、林床性多年生草本オオバナノエンレイソウでは、種子が散布された翌年に発根だけが生じ、翌々年の春にはじめて実生となって地上に展開する。このように発根のみが先行する理由について未だ明らかにされていないが、発根のみが先行することは植物にとって長期的に幼根を維持するコストが生じるために、おそらくそのコストに見合うメリットが存在すると考えられる。これまで、私達が行なった予備観察から、オオバナノエンレイソウでは発根状態の種子の段階から菌根が形成され、菌根菌との共生関係が生じていることが明らかになった。しかし、新たに糖生産を行うことができない発根のみの状態の植物が、糖と引き換えにこの共生関係からどのようなメリットを得ているのだろうか?また、それは二重休眠性の進化と関連があるのだろうか?そこで本研究は、オオバナノエンレイソウにおいて実生定着と菌根菌共生との関係を明らかにし、林床植物にみられる二重休眠性の進化との関係について考察することを目的とした。まず野外において、実生個体や発根状態の種子を掘り出し、菌根菌の感染率を評価した。つづいて、共生関係が実生定着にどのような影響を与えるのかを明らかにするために室内で播種実験を行ない、菌根菌存在土壌と非存在下土壌での幼根の成長率や実生の死亡率などを調査した。今回の発表では、これらの結果から菌根菌がどの時点でオオバナノエンレイソウの幼根に侵入し、その結果どのような影響を及ぼすのかについて主に議論する。

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