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一般講演 P1-157

開所に生育する落葉広葉樹の樹冠上部における当年枝特性の樹高依存性

*宮田理恵,甲山隆司(北大・環境科学院)

樹木の当年枝は同化部 (葉) と非同化部 (茎など) からなり、両者間の重量分配は個体の成長や維持に大きく関わっているだろう。樹木の高さ成長に伴って樹冠が地表から遠ざかるので同じ葉量を維持するのに必要とされる非同化部は増大するはずだ。このように個体内で増大する非同化部を維持するために、当年枝では同化部への重量分配が増大するであろう。従って、明るい光環境下であっても当年枝の構造は樹高成長に伴って変化する必要があると考えられる。そこで、さまざまな亜高木・高木種ごとに異なるであろう当年枝特性の樹高依存性を明らかにするために、以下の調査とデータ解析を行った。

2006年7〜8月に北海道大学苫小牧研究林の冷温帯広葉樹林において、被陰されていない明るい環境下に成育するアオダモ、サワシバ、イタヤカエデ、ホオノキ、アサダなど 13 樹種の個体 (各樹種 24-52 個体; 樹高 1-23 m) の樹高とそれらの樹冠上部から採取した当年枝の葉面積、葉乾燥重量、乾燥重量の測定を行った。

当年枝における「葉と枝への重量分配様式」と「単位面積あたりの葉重量 (SLA)」の樹高依存性を調べるために、潜在変数をもつ階層ベイズモデルを新しく開発した。このモデルは当年枝特性の種間共通部分・種差・個体差ならびに測定誤差を同時に考慮するものである。Gibbs sampler を使って推定したパラメーターの事後分布から、当年枝内の重量分配に関しては樹高の増大とともに葉重量への分配が増大 / 減少 / 変化しない種が混在していることがわかった。また樹高増大に伴ってSLA は減少し、その傾向に種間差はなかった。この結果は、冷温帯林の広葉樹における樹高成長に対する当年枝特性の応答の多様性と普遍性を示すものと考えられる。

日本生態学会