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一般講演 P1-163

ナタマメ属2種とアリの生態学的研究

*山城明日香(徳島大・院・人間自然環境),山城考(徳島大・総合科学)

アリと植物間の相互関係のうち、最も幅広く見られる共生関係は花外蜜腺を持つ植物に対するアリの防衛共生である。花外蜜に集まるアリが植食動物から繁殖器官や栄養器官を防御し、植物の繁殖成功度を高めることは多くの研究で実証されてきたが、その防衛効果はアリ種や食植性動物の種類およびその採食圧の違いによって異なることが知られている。

本研究では、ハマナタマメ(Canavalia lineata)とタカナタマメ(C. cathartica)の花外蜜を利用するアリの花と果実に対する被食防衛について、アリ種間の比較、植物種間の比較を行った。その結果、ハマナタマメとタカナタマメの花に対する防衛効果はアリ種によって異なり、花外蜜を優占的に利用するアリ種で高い防衛効果が見られた。また、花に対する防衛効果は地域によっても異なっており、食植性昆虫による採食圧が高い地域では高い防衛効果が見られた。しかし、果実に対するアリの防御効果は、ハマナタマメでは、ほとんどの個体で果実の成熟に伴いアリの個体数が減少し、果実の食害率は高い傾向が見られた。一方、タカナタマメでは、果実の成熟に伴うアリの個体数の減少はハマナタマメに比べ低く、果実の食害率はより低い傾向が見られた。これらの結果より、果実期にアリが花外蜜腺を利用する長さによって、果実に対するアリの防衛効果が異なることが予想される。そのため、タカナタマメはハマナタマメに比べより緊密なアリとの防衛共生関係を結んでいる可能性がある。

日本生態学会