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一般講演 P1-167

北方林樹木グイマツの花芽形成におけるLEAFY相同遺伝子の発現と気象要因

*岩崎(葉田野)郁(岡山県生物科学総合研究所),内山和子(北海道林試),小野清美(北大・低温研),渡辺一郎,八坂通泰,来田和人(北海道林試),小川健一(岡山県生物科学総合研究所),原登志彦(北大・低温研)

北方林における「生り年」の分子機構を明らかにするため、北海道立林業試験場(美唄)に生育するカラマツ属グイマツ(Larix gmelinii var. japonica)からシロイヌナズナ花成決定遺伝子LEAFYの相同遺伝子LGY1LGY2を単離し、2004年から2006年までの3年間月1回採取した試料を用いて遺伝子の発現解析を行い、気象要因との関係を調べた。これまでに、LGY1LGY2は、開花した雄・雌花よりも翌年に花となる芽で発現が高く、芽において、LGY1の発現は5月から増加し9月に減少するのに対して、LGY2は恒常的に発現することがわかった。さらにシロイヌナズナ花器官形成遺伝子AGAMOUSのグイマツ相同遺伝子の芽における発現が7月から認められたことから、LGY1は花器官形成開始より以前に発現が始まり、グイマツの花芽形成の決定に関与すると考えられた(第53回日本生態学会大会)。回帰分析の結果、グイマツでは5月の低温と6月の高温が翌年の豊作と相関が高いことがわかっている(内山、来田、黒丸、未発表)。2004年から2006年までの5月のLGY1の発現量を比較すると、2005年では2004年、2006年より発現の時期が早まっていた。美唄のアメダス気象観測データから、LGY1の発現開始時期が早まっていた2005年では5月に低温が続いていたことがわかった。気温低下によりLGY1の発現が促進されると考えられ、グイマツの豊作(生り年)にはLGY1発現の促進が必要であると考えられる。

日本生態学会