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一般講演 P1-169

フランス・オルヌ県アランソンのセイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)採種園における花粉によるジーン・フローの年次変化

宮本尚子(林木育種センター),Christian RAQUIN, Paola BERTOLINO, Marie-Elise MORAND-PRIEUR, Beatrice ALBERT, Etienne KLEIN, Nathalie FRASCALIA-LACOSTE (パリ南(XI)大学)

セイヨウトネリコは、ヨーロッパから西アジアにわたって分布し、フランスでは北部に自生する。成長が早く、材質、材色が良いことから、経済的価値の高い広葉樹として造林に用いられている。またセイヨウトネリコは雄個体、両性個体、雌個体に加え、雄性両全性個体と雌性両全性個体も存在し、性システムが多様な種である。また,雄性両全性個体および雌性両全性個体の中でも単性花の割合に連続的な変異が存在する。フランスのオルヌ県アランソンにある本種の採種園(1990年設定)では,2000、2001、2002の各年に十分な着果がみられた。そこで,セイヨウトネリコでの交配動態を明らかにすることを目的として,母樹別の自然交配種子を対象とし、マイクロサテライトマーカー3座を用いて父性解析を行った。Mating Modelsを用いて解析を行った結果、自殖率は2000年、2001年、2002年の順に平均で1.7%、2.6%、2.0%と推定され、低い値をとった。採種園外部からの、花粉の混入率は同様に平均84%、67%、56%となった。現段階では他樹種の採種園の結果と比較すると全体的にやや高い混入率であるが、年々混入率が低くなっている。このような結果には雄花をつける個体が増加してきたことが影響していると考えられた。花粉親としての繁殖成功率に最も影響を与えていた要因は花粉親の性別で、主に雄花をつける雄個体と雄性両全性個体の繁殖成功率は、両性花個体をつける個体に比べて有意に高いことが明らかになった。

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