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一般講演 P1-173

エゴノキの繁殖器官の減少過程における樹木個体間変異:key-factor/key-stage分析による解析

*長瀬ほなみ(名大院・生命農),福本浩士(三重県),梶村恒(名大院・生命農)

樹木個体間において、健全種子の生残数に変動をもたらす要因を明らかにするため、中部地方の温帯落葉広葉樹林に自生する亜高木樹種エゴノキ(Styrax japonica Sieb.et Zucc)(25本)について、散布前繁殖器官の減少過程を5年間に渡って調査した。シードトラップによって回収した繁殖器官を発育ステージ(蕾、花、未成熟果実、成熟果実)と内部状態(健全、発育不全、変質、虫害、鳥獣害)を確認して計数し、樹木個体ごとに生命表を作成した。また、各樹木個体の胸高直径、樹冠体積、樹冠内の相対照度を測定した。これらのデータから、key-factor/key-stage分析を用いて、樹木個体間の変動がどの発育ステージにおけるどの死亡要因によって決定されているのか、また、それには個体のサイズと光環境および繁殖器官の生産数の中でどの要因がより強く関与しているのかを検討した。各年における個体間の変動をもたらす発育ステージと死亡要因は、2001年、2003年、2005年が成熟果実への食害、2002年が花の発育不全、2004年が蕾の発育不全であった。今回測定した樹木の特性のうち、これらにもっとも密接に関与していたのは、2003年は樹冠体積であり、その他の年は胸高直径であった。繁殖器官の生産数や樹冠の光環境よりも、樹木のサイズの方が、繁殖器官の発育不全の程度や、成熟果実の食害、すなわち捕食者であるヤマガラの捕食行動により強く影響をおよぼし、その結果、樹木個体間の変動がもたらされているものと示唆される。

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