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一般講演 P1-175

萌芽再生したアオダモのデモグラフィーと稚樹バンクとしての役割

滝谷美香(北海道林試道東支場),大野泰之(北海道林試),八坂通泰(北海道林試),渡辺一郎(北海道林試),松木佐和子(岩手大学),中川昌彦(北海道林試)

木本植物の多くは,個体の維持・再生手段の一つとして萌芽を行う.萌芽による再生を行う利点として,種子による更新の様に豊凶に左右されないことや,萌芽枝が親個体の貯蔵した養分を利用可能なため初期成長が早く下層植生等との競争に強いことなどが考えられる.

北海道の太平洋側を中心に分布する落葉広葉樹のアオダモは,生育地において複数の幹による株を形成していることが観察される.このことは,アオダモが萌芽による更新や再生を行っていることを示唆する.また,アオダモはマスティング現象が確認されており,結実量の多い年には非常に沢山の種子を生産するが,次の結実年との間には2年から5年程度の全く種子を生産しない年を挟む.このような木本種にとって萌芽による再生手段は,個体および個体群の維持のために重要であると考えられる.

演者らは,これまでにアオダモ若齢林において,アオダモ個体の地上部除去や上層を占める他種の排除によるアオダモの萌芽再生への効果を明らかにするために調査・研究を行ってきた.

本報告では地上部除去直後に発生した萌芽枝の消失の過程や,新規に発生する萌芽枝の加入本数および,これらの萌芽枝の成長量に関する調査・解析を行った.これらの結果から,アオダモ萌芽枝の発生初期の動態を明らかにする.更に同林分において実生による更新稚樹の生残と成長についての調査を行った.実生と萌芽による更新初期の動態を比較し,萌芽が更新初期に果たす役割について検討する.

日本生態学会