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一般講演 P1-188

異なる資源分配様式で繁殖器官を発達させるムラサキシキブ属2種

*伊藤愛,菅原未知登,百瀬邦泰,二宮生夫(愛媛大)

単性花植物は、種子生産に至る雌花と、種子生産に至らない雄花とで資源の分配を変え、繁殖に投資される資源を効率よく配分していると言われている。一方、両性花は、全ての花が種子を生産する能力をもつ。しかし、成熟果実になり種子生産に至る花は一部にすぎない。そこで、両性花植物においても効率よい資源配分を行なうため、最終的に種子生産に至る花とそうでない花とで、資源の投資量が異なるのではないかと考えた。この研究では、両性花植物であるムラサキシキブ属2種を用い、繁殖器官の乾燥重量、窒素・炭素濃度を発達段階ごとに測定し、資源の投資がどの様に行なわれているかを調べた。

ムラサキシキブとヤブムラサキの繁殖器官を、つぼみ・花・未熟果実1・2・3・成熟果実の6つの発達段階ごとに採取し、個々の繁殖器官の乾燥重量、窒素・炭素濃度を測定した。また、繁殖器官の総個数をかぞえ、残存率を求めた。

繁殖器官の乾燥重量は、ヤブムラサキで、結実以降大きく増加した。発達段階ごとでは、ムラサキシキブには重い花と軽い花が存在した。1個体がつける花の平均個数はムラサキシキブの方が多かったが、繁殖器官の残存率に有意な差は認められなかった。結果より、ムラサキシキブは重さの異なる二型の花を多く作り、種子生産に至りやすい花を残し、そうでない花を脱落させて資源の損失を抑えていると考えられた。また、ヤブムラサキは花の数を少なくし、個々の繁殖器官に多くの資源を投資していると考えられた。窒素量は、花から未熟果実1に発達する段階で大きく増加した後、一度減少し、再び増加するというパターンが両種でみられた。ただし、減少が起こる段階や再増加までの期間は種で異なった。この様な資源投資パターンの違いは、繁殖器官のサイズや数によって、種レベルで異なると考えられた。

日本生態学会