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一般講演 P1-194

ムカゴトラノオの生理生態学的研究

*冨田美紀(静岡大学・院・理学部),増沢武弘(静岡大学・理・生物)

ムカゴトラノオ(Polygonum viviparum)は高山帯に生育する多年生草本植物である。花茎に有性生殖である花と栄養繁殖であるムカゴを持つが、花とムカゴの割合は生育環境によって変化するといわれている。現在までの研究において、繁殖器官における花とムカゴの割合が生育環境によって異なることが明らかになされた。一方、花とムカゴの割合は地下茎の貯蔵物質の質や量によっても影響を受けると考えられる。

そこで本研究では、(1)花茎にムカゴのみをつける個体と、(2)花茎に花とムカゴをつける個体と、(3)花茎をつけない個体、の3種類の個体の地下茎について、バイオマスの解析と高速液体クロマトグラフィーを用いた貯蔵物質の解析を行った。また、地下茎においては、地下茎を先端から(新)、(中)、(旧)の3つの部分に分け、それぞれの部分での貯蔵物質の解析を行った。

結果として、各個体の地下茎の部分による貯蔵物質は、どの個体においても共通して、新しい地下茎(新)においては、糖に関してはスクロースのみが検出された。そして、(中)、(旧)ではフルクトース、グルコース、スクロースが検出され、濃度は(新)(中)(旧)の順で高くなっていた。また、ムカゴのみの花茎をつけた個体と花ありの花茎をつけた個体では(旧)においてスクロースは0.048mg/mg DWであったのに比べて、花茎をつけなかった個体は(旧)において0.028mg/mg DWと濃度が低かった。デンプンについては、その逆で、花茎をつけた個体の(新)、(中)で濃度が高く、(旧)ではそれより濃度が低かった。さらに、花茎をつけなかった個体では(新)から(旧)へと濃度が高くなっていた。(旧)においては花茎を持つ個体では0.204mg/mg DW、花茎をつけない個体では0.357mg/mg DWと(旧)において大きな違いが見られた。

日本生態学会