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一般講演 P1-199

熱帯木本における枝径-葉面積関係の比較

*饗庭正寛(京大・生態研センター),五十嵐秀一(愛媛大院・農学研究科),中静透(東北大院・生命科学研究科)

個葉サイズおよびそれと強く相関した小枝の径は、同一群集内においても種間差が著しく、またその平均値は緯度や降雨量などの環境傾度に伴って変化することが知られている。この変異は植物の構造において最も顕著なもののひとつであり、個葉サイズや枝径の機能、両者が強い相関を示す理由やその種間変異の生態学的意義は、古くから注目を集めてきたが、未だほとんどわかっていない。

本研究では、マレーシア・サラワク州において景観レベルで共存しながら、異なった選択圧を受けていると考えられる林冠高木、その稚樹、林冠の蔓性木本、林床低木、二次林のパイオニア種樹木を対象として、個葉サイズと枝径、および両者の関係を比較することにより、その機能の解明を試みる。林冠高木は、潤沢に資源(炭素)を利用可能な一方、強風や日中の激しい蒸散、葉温上昇などのストレスにさらされる。蔓性木本は、林冠高木と同じ環境に生育しながら、枝の強度に対する選択圧は弱いと考えられる。また、林床の稚樹や低木では、強風や強光のストレスを受けることはないが、利用可能な炭素が厳しく制限されている。パイオニア種は、資源は潤沢だが、周囲の個体との競争が激しい。

これら異なる選択圧を受けるグループを比較することにより以下の問いに答えることを目指す。(i)樹木の生活史、生育環境は、葉や枝の構造にどのような影響を与えるか?(ii)葉と枝の間の相関の原因と推測される、力学的強度、水輸送、物質分配などのうち、相対的に重要と考えられるのはどれか?

日本生態学会