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一般講演 P1-219

稼がない陽葉:草本40種を用いた解析

岡島有規,澤上航一郎,*舘野正樹(東大・院・理・日光植物園)

陽葉と陰葉の意義は、構成コストを反映した重さ当たりの稼ぎから理解できる可能性がある(Tateno and Taneda 2007)。今回、より一般性の高い結論を得るために、さまざまな光環境のもとで生育している40種の草本を用いて比較検討を行った。

これらの種では開空度が小さくなるとSLAは大きくなり、より陰葉的な葉をつくっていた。通常用いられる面積当たりの光合成速度では、SLAの小さい厚い陽葉の方が最大光合成速度が大きいという良く知られた結果となった。一方、重さ当たりの光合成速度は、光が弱くなるにつれてSLAとの正の相関が強くなった。また、強光下ではSLAとの相関が見られず、重さ当たりでは、どのような光強度でもSLAの大きな陰葉の光合成速度がSLAの小さな陽葉の光合成速度を下回ることはなかった。

得られた光−光合成曲線と、1日の光量子束密度の変化から、葉の重さ当たりの純同化量を求めた。晴れの日に陰葉の純同化量が陽葉のものを上回ることは光−光合成曲線から容易に想像できるが、「陰葉の純同化量は、曇りの日のものでさえ、晴れの日の陽葉の純同化量と同程度ある。」という興味深い結果が得られた。

これらの結果は、短期的な稼ぎという評価基準を用いる限り、どのような光環境のもとでもSLAの大きな陰葉的な葉が有利であることを示している。したがって、強光下でSLAの小さな陽葉が作られることは、他の評価基準を考えないと説明できない。ここで用いた種では、葉の引っ張り強度はSLAが小さいほど大きくなり、また葉の重さ当たりの蒸散量はSLAが小さいほど小さくなっていた。強光下でSLAが小さくなることの究極要因として、風などの物理ストレスに対する抵抗性の増大や水ストレスの回避によって期待される、長期的な稼ぎの増加というメリットをあげることができるだろう。

日本生態学会