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一般講演 P1-232

鳥取砂丘の植物の生理生態 2. 窒素利用に関して

*小山里奈(京大・情報), 山中典和(鳥取大・乾地研), 大手信人(東大・農), 松尾奈緒子(三重大・生物資源), 嶋村鉄也(京大・AA研), 尾坂兼一(京大・農), 小山晋平(京大・農), 徳地直子(京大・フィールド研)

近年鳥取砂丘で問題となっている砂丘の草原化については、先行研究により、環境要因として砂の移動が重要であり、砂丘への植物の侵入・定着には適度な砂の堆積が必要であることが明らかにされている。しかし、陸上生態系においてしばしば植物の成長の制限要因となる窒素に関して、植物の窒素利用・砂丘における窒素動態の側面から見ると、非常に貧栄養であるとされる砂丘に植物が侵入・定着する機構には多くの不明点が残されている。これまでの調査で、砂丘の植物数種が窒素源として硝酸態窒素を利用しており、砂中の硝酸態窒素が植物にとって有効な窒素源であることが明らかにされた。このような砂中の窒素について、窒素固定植物が供給源として関与している可能性が考えられる。本研究では砂丘に植生が維持される機構について明らかにするため、砂中の窒素動態と植物の窒素利用に着目して窒素固定植物と非窒素固定植物の比較を行った。

調査対象は、ニセアカシア・アキグミ(窒素固定種)・ハマゴウ・エゾスナゴケ(非窒素固定種)である。硝酸還元酵素活性(NRA)を指標として利用している窒素源を調査し、生育場所の窒素養分条件との比較を行った。その結果、エゾスナゴケは高いNRAを示し、他の3種でもNRAを検出したことから、4種は全て硝酸態窒素を窒素源として利用していることが明らかになった。植物体内の総窒素濃度は窒素固定植物で高かったのに対し、砂中の総窒素現存量はハマゴウの生育場所で一番高かった。砂中の利用可能な無機態窒素現存量には生育する植物による種間差は認められず、非窒素固定種が窒素固定種と同様に砂の窒素養分条件に影響を与える可能性が示唆された。

日本生態学会