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一般講演 P1-234

CO2噴出地由来のオオバコの成長に対する栄養条件の影響

中村伊都, 小野田雄介, 彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)

植物の高CO2応答はこれまで多くの研究者によって調べられてきたが、その多くは進化的応答を無視してきた。選抜実験や遺伝型間の比較研究ではCO2濃度が選択圧となる可能性が示唆されており、将来の植物の応答は現生植物のそれとは異なるかもしれない。我々は生態学的研究に適したCO2噴出地をいくつか発見し(Onoda et al. Ecol Res, in press)、付近に生育する植物の生理生態学的、集団遺伝学的調査を行っている。昨年度、我々は山形県丹生CO2噴出地付近のオオバコの移植実験を行い、高CO2由来の個体の地上部/地下部比(R/S比)が低く、相対成長速度(RGR)が高いことを見いだし、また、通常CO2域と高CO2域の間で遺伝的距離が比較的離れていることを発表した。今回は、由来間の生理生態的性質の違いが現地のCO2環境への適応にどのように貢献しているのかを明らかにするため、高・低CO2環境から移植した個体から自殖種子を得て(それぞれH個体・L個体)、詳細な成長解析を行った。特に、R/S比の違いは栄養条件と密接な関係にあることが知られているため、生育CO2条件に加えて栄養条件の影響を調べた。H・L両個体間の成長特性の違いには時間依存性が見られ、R/S比の違いは発芽後ある程度日数が経ってから見られた。また、L個体は相対的に大きな根サイズのため窒素吸収速度が高く、成長後期には高い葉窒素含量を持っていた。繁殖器官重は栄養条件によって応答が異なり、富栄養ではL個体のほうが、貧栄養ではH個体のほうが多かった。これらの結果から生育条件によってH・L個体のどちらがか有利かが変わることが明らかになったが、異なるCO2環境への適応についてはさらなる研究が必要である。

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