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一般講演 P1-247

中国半乾燥地に生育する2種類のヨモギにおける成長と水分生理特性に水ストレスが与える影響

*佐々木梨華(岡山大農),李佳陶,三木直子,石井義朗,坂本圭児,吉川賢(岡山大院環境)

現在、砂漠化が進行している地域のひとつに中国の毛鳥素沙地があり、砂漠化対策として沙地の緑化が早急かつ重要な課題となっている。毛烏素沙地には約50種のヨモギ属が生存している。なかでも落葉半低木の黒沙蒿(Artemisia ordosica)と白沙蒿(Artemisia sphaerocephala)が代表的な樹種である。いずれも成長が速く、優れた耐乾性を持っているが、黒沙蒿は半固定・固定砂丘だけでなく流動砂丘にも侵入するのに対して、白沙蒿は流動砂丘に多く分布するが、固定・半固定砂丘にはほとんど見られない。両樹種とも根系は比較的浅いため、土壌水分の変動の影響を受けやすく、その順応能力の違いによって分布域が異なると考えられる。

本研究では、黒沙蒿と白沙蒿の耐乾性の違いを調べ、分布域が異なる原因を明らかにすることを目的とした。そこで土壌水分条件をpF1.8(対照区)、pF3.0(弱ストレス区)、pF4.2(強ストレス区)の3段階に制御して生育させ、成長量や、蒸散特性などを測定するとともに、潅水前後で光合成反応の違いを調べた。

両樹種とも水ストレス下で成長が抑制された。黒沙蒿は水ストレスによって気孔が小型化するとともに密度が高くなる傾向を示した。その結果、水ストレスによって気孔蒸散速度は速くなったが、葉の水分生理特性が変化した。また水ストレスによってクチクラ蒸散速度が抑えられた。光合成速度は潅水前は低く、潅水後に高まった。白沙蒿の気孔の形態は水ストレスを受けても変化しなかった。また潅水前後の光合成速度や、蒸散特性、葉の水分生理特性に変化が認められなかった。

以上のように、水ストレスによって両樹種とも成長は抑制されたが、黒沙蒿は葉の構造を変化させ、白沙蒿は葉の機能を変化させることで水ストレスに対応していることが明らかとなった。

日本生態学会