| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-010

岩手県・安比高原における土壌CO2フラックスの時間変動

*橋本徹,三浦覚(森林総研)

森林土壌は巨大な炭素貯蔵庫であり,林床からの土壌CO2フラックスは地球規模炭素循環の主要経路の一つである。土壌CO2フラックスの変化は炭素循環に多大な影響を及ぼす可能性があるため,その動態を明らかにすることは重要である。土壌CO2フラックスは大きな時空間変動を示すため,様々な期間・場所での測定データを積み重ねていかなければならない。そこで,本研究では,岩手県・安比高原のブナ二次林において土壌CO2フラックスの連続測定を行った。

溝口他(2003)が開発した自動開閉型チャンバ4台を用いた密閉法で,2004年5月〜2005年11月にかけて無雪期の土壌CO2フラックスを1時間おきに連続測定した。同時に深さ5 cmで地温とTDRによる土壌体積含水率も測定した。

その結果,土壌CO2フラックス速度は,2004年に3.8 - 176.5 μgC m-2 s-1,2005年に1.1 - 161.5 μgC m-2 s-1 の範囲で,8月初旬に最大となるような一山型の季節変化を示した。この季節変化は地温の季節変化とよく一致した。一方,土壌体積含水率は降雨イベントによって大きく変動しながら,全体としては夏場に低下するような季節変化を示した。土壌CO2フラックスの時間変動はほとんど地温の変化で説明できた。地温 − 土壌CO2フラックスの指数関数式から計算したQ10値は3.7 ± 0.7であり,既往報告の値より高めだった。積雪期の土壌CO2フラックスは測定していないが,冬季地温データから推定した積雪期の土壌CO2フラックスを無雪期の測定データに加算して年間炭素放出量を推定したところ,836 ± 187 gC m-2 yr-1であった。

日本生態学会