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一般講演 P2-041

森林流域から流出する溶存有機物の生成・流出機構

*大塚泉(京大院農),大手信人(東大院農),藤本将光,谷尾陽一,谷誠(京大院農)

陸上バイオマスの大部分を占める森林生態系からは、渓流を通じて栄養塩や有機物が流出し、下流の陸水生態系や沿岸生態系などに影響を与えている。その中でも溶存有機物(DOM)は、エネルギー源や各種微量元素のキャリヤーとして注目されている。本研究は森林流域からのDOM流出機構の解明を目的とし、渓流水DOMの濃度変化をモニターした。また、渓流に隣接する地下水やライパリアンゾーンなどのDOMと渓流水DOMを比較し、渓流水のDOMのソースについて調べた。

調査は滋賀県南部に位置する不動寺水文試験地において2002年より約3週間ごとに行った。源頭部で土壌水と地下水を採水し、渓畔(上流部・下流部各1点、計2点)・渓流(源頭部から集水域出口まで7点)でも採水を行い、渓流水採水点の内4点で流量を測定した。また雨量を転倒枡式雨量計により観測した。上述の試料のDOC濃度を測定し、また一部の試料については紫外線吸光度と三次元蛍光の測定を行った。

渓流水のDOC濃度は、夏期に高くなる季節変化があり、この傾向は下流ほど顕著であった。土壌水・地下水・湧水のDOC濃度には渓流水のような季節変化が見られなかったことから、夏期は渓流内でのDOM生成が活発である可能性と、夏期に渓流水よりDOC濃度の高い土壌水の流入が増える可能性が考えられた。また、夏のDOCの濃度上昇は、夏期の降水量の少ない年で大きく、平年並みの降水のあった年は緩やかであり、渓流水のDOM形成には、降水とそれに伴う水文過程が重要であることが示唆された。発表では渓流中のDOMに対する土壌水・地下水、ライパリアンゾーン、リターなど有機物の寄与が、季節や先行降水量によってどのように変化するかを検証する。

日本生態学会