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一般講演 P2-050

河川地形の階層構造に対応した堆積有機物と生産起源の分布動態

*今井義仁(京都大・工),高津文人(京都大・生態研),竹門康弘(京都大・防災研),永田俊(京都大・生態研),池淵周一(京都大・防災研)

河川生態系の生産起源は,上流では森林由来の他生性有機物,中流では現場の自生性有機物,下流では上流側からの流下有機物にそれぞれ依存する傾向が知られているが,各流程の特性が波及する距離に関する研究は少ない.流下粒状有機物は河川地形によって捕捉されやすさが異なるため,生産起源の変化は河床地形の影響を受けると考えられる.そこで,本研究では,河床に堆積する粒状有機物を対象に,流程スケール,瀬淵スケール,微地形スケールの粒径別分布様式や生産起源の違いについて,δ13C,δ15N,C/N比,クロロフィル濃度を用いて調査した.また,増水低減過程における粒状有機物と生産起源の分布変化を調べた.

調査は,京都市鞍馬川における勾配の異なる3つの流程(浸食区,移行区,堆積区)で行った.2005年10月の平水時には,各流程で粒状有機物の河床分布調査を行い,移行区では,2006年1月下旬〜2月中旬にかけて,増水低減過程における河床分布動態調査を行った.

その結果,全粒合計堆積有機物量は,堆積区淵上端の蛇行内側で最も多く,移行区瀬下端の澪筋部で最も少なかった.また,瀬淵構造がよく発達した移行区では,1 mm以上の粗粒状有機物が淵で多くみられた.一方,生産起源別にみると,浸食区では他生性有機物の割合が高く,移行区では自生性有機物起源の割合が増加した.また,浸食区では他生性有機物と自生性有機物が比較的に未混合の状態であったが,堆積区ではよく混合された状態で堆積していた.これらの結果は,瀬-淵構造の発達した自然河川では,約2 kmスケールの流程で生産起源が変化しうることを示している.その現象過程として,蛇行内側や淵尻瀬頭などの河床微地形が重要な役割を果たしていると考えられた.

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