| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-060

チベット高原における標高に伴う開花植物のバイオマスアロケーション

*沈海花(東大・農), 李瑞成(中国科学院), 下野綾子(国立環境研),古松(中国科学院),唐艶鴻(国立環境研),鷲谷いづみ(東大・農)

植物の繁殖器官への投資はポリネーターの誘因と密接な関連がある。ポリネーターの量は標高の増加とともに減少することが知られているが、それに相応して植物の繁殖器官へのバイオマスアロケーションも変化すると考えられる。さらに、その変化は虫媒花と風媒花で異なると考えられる。この仮説を検証するために、本研究は、チベット高原中部地域で約2000キロの距離にわたって、垂直距離3000mにおける異なる標高に生育する計約60種類の開花植物について、各器官のバイオマスアロケーションを測定した。その結果、ほとんどの植物は標高に伴って、バイオマスが低下し、地上部と地下部の比が小さくなる傾向が見られた。また、植物分類群によって標高に伴う花への投資割合は異なるが、多くの科(15科のうち11科)では標高の上昇に伴い花への投資割合が高くなることがわかった。とくに花が目立つような分類群では、花への投資割合が高く、リンドウ科、シソ科、キク科、サクラソウ科はそれぞれ植物個体総幹重量の35%、30%、25%と20%が花と付属構造に投資していることがわかった。一方、イネ科、カヤツリグサ科のような地味な花を持つ分類群では、標高が高くなると花への投資が低下することも示された。これらの結果から、標高に伴う繁殖器官への投資は分類群によって変わり、それは繁殖様式との関連が極めて高いことが示唆された。

日本生態学会