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一般講演 P2-082

大台ケ原の衰退林における防鹿柵がトウヒ稚樹の生残と成長に及ぼす影響

*木佐貫博光, 中井亜理沙, 灘本明子, 林佐智子, 脇野雅子(三重大生資)

防鹿柵が樹木の更新やミヤコザサの成長に及ぼす影響と,林床微地形が稚樹の成長に与える影響を解明するために,大台ケ原正木峠の衰退林に設置された防鹿柵の内外においてトウヒ稚樹の生残,成長を調査した.2002年に防鹿柵の内外に各2本のベルト調査区(10m×100m)を設置し,稚樹の樹高,樹高成長量,ササの桿高を測定した.2005年にはササの被度も測定した.トウヒ稚樹の本数は,2002年は柵内302本,柵外38本で,2005年は柵内284本,柵外32本であった.柵内の平均樹高が柵外の樹高よりも高かった.柵内では低い樹高階で枯死率が高かった.柵外では樹高階0〜20cmで枯死率が高かった.ササの桿高および被度は柵内のほうが柵外よりも高かった.柵外のほとんどの稚樹に採食痕が確認されたことから,食害に対する防鹿柵の防止効果が示唆された.一方,柵内ではササの桿高と被度が柵外よりも高かったことから,柵内で樹高が低い個体ほど枯死率が高かったのは,ササによる被圧が原因であろう.柵内では樹高が比較的高い20cm以上の個体も枯死しており,ササ高よりも樹高が低い個体ではササによる影響が大きいと推察される.柵内での林床微地形を腐朽木,根株と倒木,根張,ピット,マウンド,地面,岩に区分した.ピットと岩では樹高,樹高成長量,樹高成長率の値が他の微地形の値よりも高く,ササの桿高と被度の値は他よりも低かった.ピットや岩はレキが多くササや草本類が侵入しにくいためであろう.地面では,樹高成長率と樹高成長量は他の微地形での値よりも低く,ササの桿高と被度は他よりも高かった.ササによる被圧が大きい柵内ではトウヒ稚樹の生残および成長に林床微地形の影響が大きいものと推察される.

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