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一般講演 P2-084

倒木上でのエゾマツおよびトドマツの発芽に倒木上の環境条件が与える影響

*飯島勇人,渋谷正人(北大院農)

北海道の主要樹種であるエゾマツとトドマツの更新立地は、主に倒木に限定されているが、倒木間でも実生密度の違いが見られる。この要因として、倒木間での発芽数の違いが考えられる。倒木上で種子が発芽するためには、倒木上に種子が散布され、発芽可能な条件が形成される必要がある。本研究では、倒木上への種子散布に影響する環境条件として、倒木の直径、倒木の樹皮や種類、およびコケ・リター層の有無(表面形状)、倒木上の最大前生個体のサイズ(Hmax)を、発芽に影響する環境条件として、光環境(rPPFD)、倒木上のコケ群落高(コケ高)、倒木の硬度を取り上げ、これらの環境条件と両樹種の発芽数の関係を3年間調査した。

北海道の針葉樹天然林内で、94本の倒木を標識し、各倒木を根元から1mごとに区切ったブロックごとに上記の環境条件を測定した。また、各ブロックで発生していた両樹種の当年生実生数を、2004-2006年の毎年秋に調査した。

直径が10cm未満、および樹皮があるトドマツの倒木では、両樹種の当年生実生がほとんど見られなかった。トドマツの当年生実生数は、直径、コケ高と正の関係にあり、硬度と負の関係にあった。一方、エゾマツの当年生実生数は、直径、rPPFDと正の関係にあり、コケ高、硬度、Hmaxと負の関係にあった。また、コケがない倒木の中でも、樹皮があるエゾマツの倒木で実生密度が高かった。硬度の減少とともにコケ高やHmaxは増加していたため、エゾマツが発芽できるのは、樹皮のあるエゾマツの倒木か、硬度が低下し、かつコケ高やHmaxが大きくない時期の倒木に限定されているのに対し、トドマツはコケがある倒木であれば、他の環境条件によらず発芽が可能であると考えられた。

日本生態学会