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一般講演 P2-098

泥炭採掘跡地における植物定着に対する谷地坊主の効果

*小山明日香(北大・環境科学院),露崎史朗

泥炭採掘跡地を始めとする高ストレス・高撹乱環境下では、種間の正の作用(Facilitation)が遷移様式を大きく規定することがある.ミズゴケ泥炭採掘跡では、地上部植生・埋土種子が消失し、地表面が強光・強風を受け乾燥化するため、高ストレス環境となる.そのため、採掘跡地の植生回復を考える上で、植物間のfacilitation作用に着目した.

北海道サロベツ湿原の泥炭採掘跡地では、スゲ2種が低植生域において谷地坊主を形成している.そこで、低植生域に発達する谷地坊主が植物定着に与える効果を調べた.まず、谷地坊主及び他の植物個体の分布を把握し、谷地坊主が植物個体に与える効果を各定着段階(生存・成長・開花・種子移入)で評価した.調査ライン(1m×10m)6本を設置し、2005年9月〜2006年9月にかけて、谷地坊主と他の植物個体の種名・座標・サイズを記録した.谷地坊主の効果(TI)を谷地坊主のサイズと谷地坊主−各植物個体間の距離で表し、谷地坊主が他植物個体の生存・成長・開花に与える影響を解析した.なお、TIの値の大きさは谷地坊主の影響の強さを表している.また、種子移入量に対する谷地坊主の影響を調べるために、2006年6月〜10月にかけて谷地坊主頂部及び周囲にシードトラップを設置した.

植物個体は、谷地坊主基部周囲に多く分布していたが、頂部には定着していなかった.生存率においては、ブタナ・ヌマガヤでTIと正の関係があった.成長においては、種によってTIに対する応答が異なっていた.開花においては、全種ともTIの影響はなかった.また、種子移入に対する谷地坊主の影響はなかった.以上のことから、全体として谷地坊主のfacilitationは生存・成長段階で強く作用するが、植物種ごとに応答強度は異なり、その結果、各種の分布パターンが異なると結論した.

日本生態学会