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一般講演 P2-099

石狩浜の海岸植物衰退をもたらす要因 −海岸植物の分布と砂の移動量との関係−

*島村崇志(道環境科学研究センター),宮木雅美(道環境科学研究センター),濱田誠一(道立地質研究所),西川洋子(道環境科学研究センター)

海岸植生が衰退傾向にある北海道石狩浜において、2001年から2006年までの5年間、出現植物とその被度を追跡調査した結果、優占種であったハマニンニクが減少し、ハマハタザオや牧草であるカモガヤが増加したが、その後内陸性のススキが年々増加して優占種となった。そこで、砂の移動量に着目し、植物分布との関係を調査した。汀線から内陸に向かってライン上に調査区をとり、砂の移動量と植物の被度を調べた。ここでは、砂浜に埋めたカップに流入した砂の重量を1日1 m2当たりに換算した量を砂の移動量と定義した。砂の移動量は、内陸に向かうほど小さくなった。砂の移動量が約3,500 g/m2/day以上の区域には、ハマニンニクやコウボウムギなどの海岸植物が分布していた。砂の移動量が約100〜3,500 g/m2/dayの中間区域では、ハマハタザオやハマヒルガオなどの海岸植物に加え、牧草のカモガヤやナガハグサが多く分布し、内陸性のススキも出現した。砂の移動量が約100 g/m2/day以下の区域においては、ハマナスなどの海岸植物に加え、ススキやチャシバスゲなどの内陸性の植物が多く分布していた。このように植物の分布は、砂の移動量に応じて変化していた。植生の経年変化は砂の移動量の変化に対応していると考えられ、石狩浜の植生衰退は、砂の移動量の減少によってもたらされている可能性が示唆された。

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