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一般講演 P2-122

釧路湿原ハンノキ林の分布・動態・更新 #4 実生による更新は可能か?

*中村隆俊(東農大・生物産業), 植村滋(北大・FSC), 矢部和夫(札幌市立大・デザイン), 高田恵利(北大・農), 山田浩之(北大・農)

近年釧路湿原では、急速にハンノキ林が拡大しており、生物多様性や植生景観等への大きな影響が懸念されている。本研究は,釧路湿原におけるハンノキ林拡大・更新メカニズム解明に関する研究の一環として、ハンノキの実生定着条件に着目した。

ハンノキ林の成立過程を理解するためには、少なくとも実生の定着と生長に関する2つの要素の評価が必要となる。しかし、既に成長・成立したハンノキ林を対象としたこれまでの調査では、特に実生定着条件の適正な評価が困難であった。そこで、湿原の様々な立地において、ハンノキの播種実験と稚樹植栽実験を行い、それらの生残・生育反応と環境条件との関係を調査することで、発芽と初期生長の側面から実生定着条件の評価を試みた。

調査地は、急増したハンノキ林が広くみられる釧路湿原南東部(広里地区)と南西部(温根内地区)を対象とした。湿原のハンノキ群落や草本群落(fenやbog)を含めた、幅広い生態系傾度を取り込めるよう調査プロットを50地点設置し、水位・土壌水質・地表面付近の光環境について調査を行った。ハンノキ種子の播種実験は、1プロットあたり200粒を直径10cm高さ5cm程の円形枠内に播種し、播種2ヶ月後の発芽数を記録した。ハンノキ稚樹植栽実験は、5cm程に生長した2年生実生苗を1プロットあたり5個体植栽し、植栽後2年間にわたり生残数の推移を記録した。また、植栽後2年目の秋に地下部を含めた全生残個体を回収し、それぞれ乾燥重量を測定した。

発芽数は日射量の多いbogで最も多く、植栽稚樹の生長は塩類に富むfenで最も良好となった。これらのデータをもとに、ハンノキの実生がどのような条件で定着し分布を広げられるのかについて考察した。

日本生態学会