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一般講演 P2-123

釧路湿原ハンノキ林の分布・動態・更新 #3ハンノキの形・現存量・年輪成長と立地環境

*矢部和夫(札幌市立大・デザイン), 中村隆俊(東京農大・生物産業), 植村滋(北大・北方生物圏), 石川幸男(専修短大・みどり), 山田浩之(北大院・農)

北海道東部の釧路湿原で、近年急速に拡大しているといわれるハンノキ林と立地環境の対応を明らかにするために、広里地区(Gライン)と温根内・安原地区(A,B,Cライン)の計121地点で、一定面積内のハンノキの幹長と基部直径を測定し、立地環境を調査した。各地点で求めたハンノキ林の特性項目はBA(総基部面積)、H(平均幹長)、SPN(個体あたりのぼう芽数)、N(個体数すなわち株数)とSEN(高さ30 cm以下の実生数)であった。環境変量は水位、pH、EC、各種イオン量であった。

ハンノキが生育していた62地点で、成長錘で幹基部のコアを採集し、年輪幅を計測した。年輪データから成長指標としてAGE(樹齢)、BAIN(初期10年の断面積の成長量)、BAOUT(最近10年の成長量)とRGR(最近10年の断面積の相対成長速度)を求めた。

ハンノキのAGEは平均で、Cラインが24年だったのに対して、他の3ラインではいずれも28年であった。BAIN、BAOUT、RGRともに、Gライン、Cライン、Bライン、Aラインの順に増加しており、最大樹高の平均もこの順序で増加していた。

相関解析において、林の特性と成長指標の項目のうち、現存量を表すBAが水位変動、EC、Cl、Na、NH4と、NがCl、Na、NH4とそれぞれ正の相関を示した。また、RGRはpHに正の相関を示し、Clに負相関を示した。他の項目はどの環境変量とも相関を示さなかった。

以上のことから4つのラインでは、ほぼ同時期にハンノキ林が定着し成長を始めたらしいが、その後の成長速度の違いがハンノキのサイズの違いをもたらしたことが推測される。しかしながらハンノキの成長を調節する環境変量は、不明瞭であった。

日本生態学会