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一般講演 P2-130

尾瀬ヶ原湿原の35年間における種組成変化と環境要因の解明

*森井悠(横国大・地),藤原一繪

尾瀬ヶ原湿原は群馬県、福島県、新潟県にまたがり、標高1,400mに位置している本州最大の湿原である。四方を至仏山、燧ケ岳などの山々に囲まれた盆地で1953年に特別保護地区、1960年に特別天然記念物に指定されている。毎年多くの登山客が訪れている観光地であるが、希少な湿原として環境保護の対象としても広く知られている。学術的研究も盛んに行われており、植物学、動物学、地質学など様々な視点から尾瀬総合調査が3度実施された(1954 ,1980, 1997)。1960年後半には植物社会学的手法による尾瀬ヶ原全体の調査が行われ、植物群落がまとめられ現存植生図、代償植生図が描かれた(宮脇・藤原, 1970)。しかし、その後の植生図は作成されていない。また、近年ニホンジカの植生への被害もあり、影響が懸念されている。本研究は1970年に発表された植生調査資料を基に現在の尾瀬ヶ原湿原の植生が現在に至るまでにどの程度進行、あるいは退行しているかを調査し、変化の要因を探ることが目的である。

2006年夏に基礎調査として植物社会学的手法による植生調査Braun-Blanquet方式(1964)、及び藤原(1997)を用いて現地調査を行った。調査は主に上田代と中田代で行い、約170箇所の植生調査資料を得た。その結果、以前裸地化していた乾燥地ではミズゴケ類を欠くチングルマ―ヌマガヤ群落が広がり、湿性地ではユキイヌノヒゲ群集が回復していることが確認された。中間湿原型のヤチカワズスゲ―ミタケスゲ群落は大きな変化は無く、残されていた。また、ニホンジカの池塘におけるミツガシワの食害や植物の食痕が確認された。ヤチヤナギの分布の拡大も観察され、中田代地域の植生図化を行い1960年後半の植生図と比較し更なる検討を行いたい。

日本生態学会