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一般講演 P2-189

アメンボの産卵に卵寄生蜂が与える影響

*平山寛之(九大・理・生態),粕谷英一(九大・理・生態)

親が子の保護を行わない動物では産卵場所が子の生存・成長に大きく影響するため、産卵場所の選択は重要である。親による産卵場所の選択には生物的・非生物要因が影響し、中でも生物的要因である捕食者や捕食寄生者の影響は大きい。

しかし、産卵場所の捕食者の存在や痕跡の影響は調査されてきたが、産卵場所以外で経験した捕食や捕食寄生のリスクが産卵場所の選択に影響するかは明らかではない。この問題をナミアメンボとその捕食寄生者である卵寄生蜂アメンボタマゴクロバチを用いて検証した。

ナミアメンボは野外では主に潜水し、水中の水草などの深い位置に産卵する。潜水せずに水面付近に産卵することも可能だが、深い位置に産まれた卵ほど卵寄生蜂による寄生(捕食寄生)を受けにくい。そのため、ナミアメンボは潜水前に経験した捕食寄生リスクに応じて産卵深度を変化させることが予測される。

この予測を検証するため以下の実験を行った。まず、アメンボに産卵基質の無い密閉容器内で卵寄生蜂0、2、6個体を24時間経験させた。その後、卵寄生蜂のいない別の容器で自由に産卵させ、産卵深度の比較を行った。

その結果、卵寄生蜂6個体を経験させたものが卵寄生蜂0個体より有意に深い位置に産卵した。卵寄生蜂2個体と卵寄生蜂0個体には有意な差はなかった。これらから、ナミアメンボは卵寄生蜂の存在から寄生リスクを認識し、それに応じた産卵深度の決定を行っていると考えられる。この結果からナミアメンボの潜水産卵の機能に、これまで言われていたハラスメント回避、あるいは卵の乾燥防止以外に卵寄生回避があるといえる。また、付随するデータから卵寄生蜂の効果の持続についても議論する。

日本生態学会