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一般講演 P2-201

ノネコは誰と親しい?−行動圏と血縁関係に着目して−

*降旗初佳,布施名利子,粕谷英一(九大・理・生態)

ノネコは豊富な餌資源のもとで、排他性を見せずに数個体が餌場を共用する『餌場グループ』を形成することが知られているが、これは、単独行動し排他的なわばりを持つ大部分のネコ科動物とは対照的である。しかしノネコの社会構造には解明されていない部分がある。

一言に『餌場グループ』といっても、餌場を共用する個体同士の関係は一様ではない。同じ餌場を共用する個体でも近接を許容する個体とそうでない個体がいること、個体同士の行動圏の重複度に違いがあることが知られている。これらは個体間の血縁関係などの要因に左右されると考えられている。ノネコの社会構造を明らかにする上で、血縁関係、餌場の共用、近接、行動圏の重複の関係を比較し、評価することは重要である。しかしこれまで、この4つの要因を同時に調査し、比較・評価した研究はない。

また、餌場を共用している個体の血縁関係にも明らかでない部分がある。グループ構成個体は母系血縁個体が中心だと考えられている。グループ構成個体には行動圏の重複が見られるため、行動圏が重複しているのは血縁度が高い個体だと考えられてきた。しかし、過去の研究では、出産の観察や毛色の頻度から血縁関係に言及していたため、血縁度は不確かだった。最近、マイクロサテライト遺伝子座から血縁度を推定した研究では、行動圏の重複度と血縁度に正の相関が見られなかったという報告もあり、餌場の共用・行動圏の重複がどの個体間で見られるのかよくわかっていない。

そこで本研究では、血縁度、餌場の共用、近接、行動圏の重複に着目してノネコの社会構造について考察する。

日本生態学会