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一般講演 P2-250

オンブバッタの体色と生息場所の雌雄差

*田中陽介,小島純一(茨城大・理)

オンブバッタAtractomorpha lataは体色多型を有し、緑色型と茶色型の個体が出現する。演者のこれまでの研究から、オンブバッタの成虫は雌雄で色型の割合が異なり、オスはメスよりも緑色型の割合が高く、メスはオスよりも茶色型の割合が高いことが明らかになっている。隠蔽効果は体色と背景の色が一致することで得られることから、オンブバッタでは、オスはメスよりも緑の草の上に多くいること、またメスはオスよりも枯れ草の上に多くいることが予想される。同時に、オンブバッタの生息する草地では、ふつう枯れ草が地表に堆積し、緑の草はその上に葉を展開していることから、雌雄で利用する位置の高さが異なることも考えられる。

体色の隠蔽効果を得る上では、静止時の位置とともに、捕食者に襲われた際の逃避後の位置も重要である。そこでオンブバッタの静止時の位置と逃避後の位置について、その材質(緑の草か枯れ草か)と高さに雌雄で違いがあるかを調べた。静止時の位置は室内実験により、逃避後の位置は野外実験により調べた。

その結果、静止時、逃避後の位置の両方において、オスはメスよりも緑の草の上に、そしてメスはオスよりも枯れ草の上にいることが多く、またオスのほうがメスよりも高い位置にいることが多かった。以上の結果にもとづき、オンブバッタにおいて色型の割合に雌雄差が生じる適応的意義を、生息環境の雌雄差との関係から考察する。

日本生態学会