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一般講演 P3-009

日和佐川河口域の藻場におけるノルマンタナイスの出現

*林 芳弘(高知水試),神田 猛(宮崎大農)

徳島県日和佐川河口では,フクロエビ上目の底生性甲殻類であるタナイス目とヨコエビ亜目が魚類の重要な餌生物となっている.しかし,本河口におけるフクロエビ上目の知見はない.そこで,本河口に形成されているホンダワラ属の藻場において,葉上部のフクロエビ上目の種組成や密度等を調べた.2005年4月〜2006年3月の1年間,月1回の頻度で,目合い45μmの網袋を海藻にかぶせて海藻ごとフクロエビ上目を採集した.海藻湿重量あたりの個体数を求めた後,調査地に繁茂する海藻の単位面積当りの湿重量から河床面積当りの個体数を算出した.採集の結果,フクロエビ上目全体で6,412個体が出現し,うちタナイス目が40%を,ヨコエビ亜目が59%を占めた.タナイス目ではノルマンタナイス1種が出現した.ヨコエビ亜目は少なくとも3種が含まれていたが,種の同定には至らなかった.他に,ワレカラ亜目1種,等脚目1種が出現した.河床面積当りの個体数は,年間を平均すると,ノルマンタナイスは38,154個体/m2(標準偏差90,061),ヨコエビ亜目は50,465個体/m2(同45,445)だった.ノルマンタナイスの密度は8月に突出して高くなり,321,145個体/m2に達したが,翌9月には335個体/m2まで減少した.こうした急速な密度変化の原因については,今後より詳細な調査が必要である.ヨコエビ亜目の密度は,6月に最大(154,799個体/m2),12月に最小(4,574個体/m2)となり,藻場の海藻密度の消長と概ね一致して変動した.

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