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一般講演 P3-040

海岸砂丘における有剣ハチ類群集とその生息場所

*遠藤知二,井上牧子(神戸女学院大・人間科学)

有剣ハチ類は、カリバチやハナバチなど重要な機能群を含んでおり、さまざまな餌資源や営巣資源を利用している。ハナバチでは、その多様性がこれらの資源によって制限されていることが知られているが、カリバチを含めた有剣ハチ類の多様性を、生息場所のなかの環境特性によって説明しようとした研究はほとんどない。ここでは、無脊椎動物相のなかでも有剣ハチ類が大きな存在を占めている海岸砂丘において、生息場所と有剣ハチ類相との関連を記述し、微生息場所の諸条件と営巣基質の利用可能性が、有剣ハチ類の局所群集の構成にどのように影響を及ぼしているかを検討する。

調査地は、京都府京丹後市箱石の海岸砂丘で、海岸から内陸に向かって草本帯(G)、小木本帯(S)、木本帯(F)の3つの植生帯が認められ、さらに前2者はそれぞれ地形的特性にしたがって、平坦部草本帯(Gp)と台地下草本帯(Gt)、平坦部小木本帯(Sp)と台地上小木本帯(St)に区分された。有剣ハチ類は、これら5つの生息場所タイプのそれぞれに3基のマレーズトラップを設置して採集された。トラップは2003年4月から10月まで約6か月にわたって設置し、2週間ごとに捕獲された昆虫を回収し、これを1トラップサンプルとした。各生息場所の環境変数および有剣ハチ類の営巣基質の調査は2006年8月に行った。

マレーズトラップでは総計139種4284個体の有剣ハチ類(アリ類を除く)が捕獲された。生息場所タイプ間で比較すると、トラップサンプルあたりの種数と個体数は海岸の草本帯で多く、内陸部にむかうにつれて減少した。一方、各生息場所タイプのトラップ間でみると、内陸部では種構成の異質性が高く、海岸の草本帯ではより均質な傾向にあった。このような有剣ハチ類の多様性のパターンについて、空間的な異質性、餌資源、営巣資源を定量化することによって分析を行った。

日本生態学会