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一般講演 P3-056

個花の花被サイズと隣花受粉の関係

*石井博, Lawrence D Harder

虫媒花が持つ目立つ花被は、明らかに訪花昆虫を誘引する器官として進化してきた。一方でポリネーター達は、しばしば各花序での採餌効率が等しくなるように花序間/花序内で行動する(ポリネーターによる理想自由分布の実現)。従って、大きな花被片が花序へのポリネーター訪問を増加させても、ポリネーターの訪問が集中した花序では一時的に報酬が減るために花序内連続訪花数が減少し、花あたりの訪花頻度はさほど変わらなくなるかもしれない。本研究ではこの仮説を、カナディアンロッキーに生育するオオヒエンソウ属植物2種(Delphinium bicolorDelphinium glaucum)を用いて検証した。その結果両種ともに、実験的に花披片を小さくするとポリネーター(マルハナバチ)の訪問頻度が減り、株内連続訪問数が増え、花あたりの訪花頻度は変わらないという結果が得られた。これは上記の仮説と一致する。一般に、株内連続訪問は隣花受粉(株内の花間による自家受粉)を引き起こす。つまりこの場合、個花の大きな花披片は個花の送受粉効量を増やさないかもしれないが、花序全体の隣花受粉を減らす役割を持っていると言える。総じてこの研究は、花序を持つ植物が、限られた資源を多くの花を作ることに投資するべきか大きな花を作ることに投資するべきかという、数と大きさのトレードオフを考える上で、欠かせない情報を提供したと言える。

日本生態学会