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一般講演 P3-058

カンコノキ属絶対送粉共生系において、Epicephala属ホソガは花の香りを利用して種特異的な寄主を判別できる

*岡本朋子(京大院 人間・環境),川北篤(京大院 人間・環境),加藤真(京大院 人間・環境)

カンコノキ属植物(コミカンソウ科)とEpicephala属ホソガ(ホソガ科)は、互いにその繁殖を依存し合っている。カンコノキはホソガのみに花粉の運搬を頼り、ホソガの幼虫はカンコノキの種子の一部のみを食べて育つ。雌のホソガはそれぞれの種が、特定のカンコノキ種のみを訪れるという高い寄主特異性が知られている。送粉系において、"共倒れ"をするような種特異的な例は珍しく、このような特殊な関係が維持されてきた背景としてホソガの寄主認識に注目した。

日本に同所的に生育するキールンカンコノキとヒラミカンコノキの2種と、それぞれの送粉者ホソガ(未交尾の雌雄)を用いてY字管実験を行った。その結果、それぞれの送粉者ホソガは、花の香りを用いて寄主であるカンコノキ種を選択できることが明らかになった。さらに、未交尾の雄ホソガも寄主の香りに誘引されたことから、寄主植物が交尾場所として重要な役割を果たしている可能性が考えられる。続いて、日本に生育するカンコノキ5種を対象とし、花の香りをヘッドスペース法で採集、その後、ガスクロマトグラフィー及び、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて化学分析を行った。得られた結果をCNESS-NMDS法を用いて解析を行ったところ、カンコノキ属5種は花の香りに含まれる微量物質でそれぞれの種が特徴付けられることが明らかになった。さらに花の香りの放出はホソガの活動する夜間では日中の3〜4倍の放出量がみられ、また、未受粉と受粉済みの雌花では花の香りの組成が著しく異なることが明らかになった。これらの結果から、1. 送粉者ホソガは花の香りで寄主を認識し、寄主植物を交尾場所として利用している、 2. 多重産卵を阻止する機構が存在する、ということが強く示唆された。

日本生態学会