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一般講演 P3-061

花上の個体を報酬の目印に利用する訪花行動

*横井智之, 藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態)

ハナバチ類では花の資源量を評価するために,先に採餌した個体が花上に残した匂いのマークや物理的な訪花の痕跡を利用することが知られている.それにより,資源量が少ない花への再訪花を回避出来る.また他種・同種他個体が採餌している花へ同時訪花すると個体間の干渉を生じ,占有するためのコストもかかるため,遭遇を避けるのが望ましい.ただしマルハナバチでは同種他個体が採餌している花にも訪花することがある.これは採餌経験が浅いもしくは若い個体が,資源量の豊富な花を探索するのに他個体を目印として利用すると考えられている.しかし多くのハナバチ類において,このような訪花行動についてはあまり知られていない.

今回クサイチゴ群落に訪花するハナバチ種を対象に,花上での干渉行動について野外調査を行った.同一花上で2個体が遭遇した場合,花を占有した個体を勝者,去った個体を敗者として対戦表を作り,行動を記録した.その結果,マイマイツツハナバチは頻繁に他種・同種他個体のいる花を訪花し,相手の利用していた花を占有する行動がみられた.一方マメヒメハナバチspp.は他個体と遭遇した場合,利用していた花を高い割合で他者に明け渡していた.またミツバチ2種は花上での他種個体との干渉がほとんどみられなかった.体サイズがほぼ同じマイマイツツハナバチとミツバチ2種では花あたりの採餌時間・パッチあたりの訪花数に違いは見られなかった.

以上から花の資源量が豊富なパッチであっても,ミツバチなど複数の種が花上の他個体への干渉を避けて採餌するのに対し,マイマイツツハナバチは他個体を花資源の目印として利用し,パッチにおける花資源の探索と花間の移動にかかる時間を短縮することで,効率よく採餌を行っていることが示唆された.

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