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一般講演 P3-075

肉食性貝類4種の飢餓耐性と酸素消費量

大田直友(阿南高専・建設システム工学)

肉食性貝類では,餌の獲得頻度(=飢えの程度)が行動,成長,産卵,個体群動態などさまざまな要素に影響を与えることが明らかになっているが,実際どの程度の飢えに耐えうるのか,さらには生理特性との関係について明らかにした例は少ない.本研究は,転石潮間帯に同所的に分布する肉食性巻き貝4種の飢餓耐性を明らかにし,基礎代謝量(酸素消費量)や身への投資割合の関係から考察する.研究対象の4種は、フジツボなどに穴を開け捕食する能力を持つイボニシ、穿孔能力を持ちながら死肉食性の強いヒメヨウラク,穿孔能力が無く死肉食性の同属2種イソニナ,シマベッコウバイである.それぞれ20個体を個別に隔離し餌を与えず飼育したところ,イソニナ以外の3種については“想定外”の生存が確認され,実験終了時の377日後にも45%のシマベッコウバイとヒメヨウラク,65%のイボニシは健在であった.一方,イソニナについては,62日後には100%の生存が確認されたが,その後106日過ぎから急激に死亡率が上昇し,50%致死は約150日にみられ,ついには219日を超えたところですべてが死亡した.さらに,全体死亡率が5%時の飢餓86日目において4種の湿重量減少率の比較を行ったところ,減少率が高い順にイソニナ>ヒメヨウラク=シマベッコウバイ>イボニシで有意な違いが見られた.一方,平常時の酸素消費量はイソニナが他の3種にくらべ高かった.さらに,体重に対する身の占める割合は,イソニナが他の3種に比べ約1.3倍(湿重),約1.6倍(乾重)ほど高く,身への大きな投資により酸素消費量も大きくなったと思われる.これらの結果と既知の生活史特性を関連させながら,肉食性巻き貝の生活史戦略について考察する.

日本生態学会