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一般講演 P3-083

コバネナガカメムシの寄主植物利用様式

*嘉田修平,藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態学)

 植食性昆虫と植物の共進化の過程は、植食性昆虫に重要な進化的影響を与えていると考えられている。植物の二次代謝物質を介した植物―植食性昆虫相互作用は、特に重要であり、多くの研究がなされてきた。しかし二次代謝物質とは無関係に、植物が植食性昆虫に栄養的に利用しにくいように進化したという説も一部では主張されている。つまり、植物側が栄養的に利用しにくいような組成を持つことにより、昆虫の食害から免れているということである。コバネナガカメムシは、イネ科のヨシ・ツルヨシをおもな寄主植物とする植食性昆虫である。これまでの実験で、ヨシで室内飼育しても非常に生存率が低い事が分かっている。その要因として、ヨシが防御物質を持っていることや、栄養物質を欠いていることが考えられた。本研究では、それらの仮説を、室内飼育実験やヨシの栄養分析により、検討した。

 ヨシのどの部位を与えるかの条件を変えた室内実験により、ヨシの先端部を与えるより根元付近の部位を与えた方が1齢幼虫期(この虫の主な死亡時期)の生存率は高く、齢期間も短かった。次に、ヨシの部位をC/N コーダーにより分析したところ、栄養の指標とされている窒素の含有量は、先端部に多く、根元部で少ないことが分かった。これらの結果から、コバネナガカメムシにとって、先端部の方が栄養的には優れているにも関わらず、根元の方がパフォーマンスが高いことが分かり、なんらかの防御物質でヨシ先端部が利用しにくくなっていることが示唆された。

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