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一般講演 P3-094

常緑広葉樹稚樹の光環境と開葉落葉フェノロジー

*内田悟(千葉大・園芸), 梅木清(千葉大・自然科学), 本條毅(千葉大・園芸), 林恩美(千葉大・自然科学), 水崎大二郎(千葉大・園芸), 宮川紗耶(千葉大・園芸), 梅澤耕一(千葉大・自然科学), 矢澤佳子(北大・環境), 井本俊輔(千葉大・自然科学)

効率的に物質生産を行うため、樹木は葉を空間・時間内に適切に配置する必要があり、時間内での葉の配置(フェノロジー)は空間的な配置(樹形・シュート構造)と同様に重要である。落葉樹の開葉・落葉フェノロジーについてはすでに様々な研究が行われており、種ごと特徴のあるフェノロジーに記述がなされ、理論的な解明も進んでいる。同様に、常緑樹の開葉も観察・記載されてきている。しかし、長期にわたる常緑樹の落葉過程をシュート・個葉のレベルで観察した例は少ない。そこで本研究では、常緑樹の落葉過程を、シュート(一成長期間に伸長した枝)・個葉のレベルで観察し、落葉のパターンや関連する要因を解明することを試みた。

千葉大学園芸学部キャンパスに自生するヤブニッケイ、シロダモ、タブノキ、スダジイ、ヒサカキの稚樹それぞれ約10個体ずつを観察対象とした。2005年4月から2006年12月まで、個体の主軸上の葉の開葉・落葉を定期的に観察した。また、季節ごとに葉面における光を測定した。

開葉が春期に集中しているのに対して、落葉は年内の長い期間でおこっていた。このため、個葉により落葉時期は大きく異なり、葉寿命の個葉間の違いは大きかった。また、落葉は個々の葉に独立して起こる現象ではなく、同じシュート内の葉がほぼ同時期に落葉する傾向があることが明らかになった。これは、常緑樹の落葉時期の決定がシュートを単位としてなされていることを示唆する。シュート単位でもとめた落葉時期にはある程度の季節性があることが認められた。しかし、シュート単位の落葉時期と光強度などの外部環境との対応は明瞭ではなかった。

日本生態学会